書かれないことのほうが多い。
これからここに書かれることよりも、書かれないことのほうが想像を絶するほど多い。
目の前に広がるその事実に背を向けたくなる。
しかし後ろを見るともうすでに書かれてしまった(ときには使い古された)文章たちが腕組みをしている。
どうしたものかと上を見上げると、空が広がっている。
あの雲に煙を吹きかけてやろうと煙草をくわえ、ポケットにあるはずのライターを探す。
もちろんない。必要なものは必要なときにいつもなくなる。
ふと横を見ると、空を見上げているひとが2人いることに気が付く。
「すみません、ライター貸してもらえませんか・・・ああ、ポロシャツしか持ってないですか。となりの方は・・・ああ、もう酔ってるんですか。」
煙草を諦めて僕は、彼らと同じように空を見上げることにする。
こうやって3人並んで空を見ていても何も始まらないかもしれない。
でももし何かが始まるとすれば悪くない始まり方だなとも思う。