2011/04/08

わからない免罪符

唐突だった。 

「おっ!久しぶりー!」


ホームで電車を待っている時。


カーキのジャケットに身を包んだ男性に声を掛けられた。 

(え、誰だ。君は。どこかで見たことはある。多分、高校の時の知り合いだ。多分。 

とりあえずここは話を合わせよう。 

『おっ、おっ、おう!』 

内心の動揺を悟られないように、余裕のある対応を。できていない。
 
ちょうどそのタイミングでホームに電車が入って来たので、ふたりで乗りこむ。 

「久しぶりだね。最近どうよ」と、彼。 

『おう、まぁまぁだよ。何とか社会人で頑張ってるよ』 と、僕。

可もなく不可もなくの答えで凌ぐ。 

彼は仮面浪人をしていたらしく、まだ大学生らしい。 

日頃鍛えたその場しのぎ相槌で対応。 

電車がじょじょにスピードを落としていく。


目的の駅にすべりこんでいく。

「ところで、今からどこいくの?」と、彼に聞かれる。 

『駅の近くにあるスポーツジムだよ』僕が答えると同時に、ドアが開く。 

「あー、そこが職場ね、なるほどね」 



正直、動揺した。 確かに見た目的にそうだけども。

『あ、いや…』 

プシュー…無情にも閉まるドア。 動き出す電車。

ドアの向こうで手を振る彼。 軽くガッツポーズをしている。


あれは間違いない、がんばってねポーズだ。

僕は、スポーツジムの人になってしまった。 

その日、ジムのトレーナーさんにやけに目がいってしまった。


あれは彼の中の僕だ。

4 件のコメント:

  1. 私服で働いていると、ビジネスマンと思われない。タクシーでも領収書くれないときとかあるし。でも、夏が近づくとスーツじゃなくて良かったと心から思う。そういうところも含め、コピーライターは楽だ。
    ちなみに、僕は高校の後輩達に「竹田さん、会社つくって社長なんですよね」という謎の誤解をされていたことがあります。

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  2. たけさん

    コメントあざす。
    夏、まじ楽ですよね。最高。
    個人事業主だったたけさんは、
    社長と間違われても仕方ないと思います。

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  3. 会う人に、あなたの中の私は、どんな“私が思いがけない 私”がいるんだろぉって思ったら、ちょっとそれを覗いてみたくなりました。

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  4. りりーさん

    わーたしかに。
    覗いてみたいし、
    聞いてみたいですね。

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