2011/04/03

だれも助けに来ない

僕が君をどんなに愛しているかをここに書いておく。

例えば、僕らは森の中を歩いている。深い森だ。

君の前を歩く僕は、道しるべとしてフリスクを撒きながら歩いている。

ふと振り返ると君は口に大量のフリスクを詰め込み、その清涼感にやられて涙を流しながら歩いている。

きっと僕も泣くだろう。

道しるべを失ったことにではなく、君が泣いていることに涙するのだ。

フリスクを撒くのをやめ、ひたすら歩いている僕らは1軒の小屋を見つける。

もちろんお菓子の家なんかじゃない。

僕らはそこに住むことにする。帰り道はもうないのだ。

僕は毎朝君より早く起きて、近くの川を見張るだろう。

大きな桃が流れてきたら、大きな穴を掘って埋めるためだ。

傷ついた鶴も助けないし、いじめられている亀だって無視する。

ピカピカ光っている竹を見つけても切らないように心掛ける。

もちろん子供なんてつくらない。

その子供はおばあさんになった君を山に捨てに行こうとするだろうからだ。

このようにして僕は他の物語の介入を拒み続けるだろう。

どこかで聞いたようなめでたしめでたしなんてクソくらえだ。

僕らは2人だけで閉じられた世界に住むのだ。

そのくらい僕は君のことを愛している。

だから僕が君のことを食べてしまっても許してほしい。

かわいらしい赤ずきんの君を。

4 件のコメント:

  1. あべこうたろう2011年4月3日 15:18

    非常にいい。

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  2. ありがとんごじゃります。

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  3. はたけやま2011年4月3日 16:01

    すごいと思ったよ。勝手に読んでしまってますが、これからも楽しみにしてます。

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  4. きょうしゅくです。(きのした)

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