ホッチキスの針を入れ替えて
また使えるようにガチャリとやると
最初のひと針が何も言わずにポトリと放り出される
後の針たちがその役目を気持ちよく果たすために
そのひと針は犠牲になるのだ
ホッチキスの針の呼び方は
しん、たま、はり、ステープル(これは可愛らしい)
などがあり特には決まってはいない
哀れな最初のひと針については
特別な名前があってもいいとは思うのだが
考えてみても全く思いつかない
必要がないから名前がないのかもしれないが
「吾輩はホッチキスの最初のひと針である
名前はまだない 名前をくれ 供養してくれ」
そう聞こえるような気がして
僕は針を入れ替えるたびに
申し訳ない気持ちになったりもするのだ
哀れな最初のひと針たちが群れをなし
夜道を歩く僕を襲ったとしても
甘んじて受け入れるのではなかろうか
文句ひとつ言えないのではなかろうか
そう思いながら
今日も針の入れ替えに手こずるのである
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