2011/05/26

ホッチキス

ホッチキスの針を入れ替えて

また使えるようにガチャリとやると

最初のひと針が何も言わずにポトリと放り出される

後の針たちがその役目を気持ちよく果たすために

そのひと針は犠牲になるのだ

ホッチキスの針の呼び方は

しん、たま、はり、ステープル(これは可愛らしい)

などがあり特には決まってはいない

哀れな最初のひと針については

特別な名前があってもいいとは思うのだが

考えてみても全く思いつかない

必要がないから名前がないのかもしれないが

「吾輩はホッチキスの最初のひと針である

名前はまだない 名前をくれ 供養してくれ」

そう聞こえるような気がして

僕は針を入れ替えるたびに

申し訳ない気持ちになったりもするのだ

哀れな最初のひと針たちが群れをなし

夜道を歩く僕を襲ったとしても

甘んじて受け入れるのではなかろうか

文句ひとつ言えないのではなかろうか

そう思いながら

今日も針の入れ替えに手こずるのである

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