2011/07/31

5年と2ヵ月使っていたウィルコムとわかれました。

5年あると人はかなり変わるね。

2011/07/28

タイムマシンの話をしようか

1895年にハーバード・ジョージ・ウェルズが著書『タイム・マシン』を発表し、

タイムマシンという概念を広めてから現代に至るまでの間に僕たちは

タイムマシンってこんな乗り物だよな(ドラえもんのあれだよな)

という固定観念というか共通イメージを植え付けられているような気がする。

10人集めてタイムマシンを描いてもらったらだいたい同じような絵になるだろう。

だからいつかパラドックスや並行宇宙の障害を乗り越えて

現代にやってくるであろうタイムマシンは、

タイムマシンらしからぬへんてこりんな形をしているのではないかと思う。

「ああ、これはタイムマシンですね」とだれもが理解できるような形の

乗り物に乗ってきたら、奪われて悪用されかねないからだ。

未来人も未来人らしからぬ服装をしているのではないかと思う。

「ああ、あなたが未来人ですね」とだれもが理解できる服装だと

面倒くさいことになって任務に支障をきたすことになりかねないからだ。

例えば、未来人は、わかめみたいなぺらっぺらのシートに乗って

ちょっとした時代錯誤により大日本帝国陸軍の軍服を着用して

ビュワーーンと現代にやって来るかもしれない。

もしその未来人を聖路加タワーの展望台から見つけたとしても

僕は見なかったふりをして、そっとしておいてあげようと思う。

なぜならばタイムトラベルには規制があり、

未来人は未来の政府かそれに準ずる機関の指示や許可を得て

現代に来ているはずであるし、未来の人々が過去を変えて良しと判断したなら

ああだこうだ文句は言えないからだ。黙って受け入れるしかない。

それに興味本位で話しかけたその未来人が僕の遠い子孫で

「全部お前のせいだからな!」

と罵倒されるようなことがあったら死ぬまで立ち直れそうにないからね。

2011/07/26

火星のニュース

火星国国営通信のオリンポス社は、29日、午前、

地球で起きた事故による死者は69億5350万人にのぼったと伝えた。

死者のうち100万人は異星人としているが、

火星国総領事館が地球政府から得た情報によると

死者の中に火星人はいない。

2011/07/22

金曜隅田川





















色:みどり
水:ふつう
波:今日も逆流。
ひとこと:膝が痛くて階段を降りるのが辛いので、上からの写真で失礼します。

その話はもう4回聞いた

最初の銃声が空気を震わせさえすれば雪崩のように戦争が始まり、

最初の水滴が地面を濡らしさえすればマシンガンのように雨が降り始める。

最初の銃声、最初の水滴は、小説で言えば最初の一行だ。

ホテルの一室で小説家は狙撃手のように忍耐強く最初の一行を待った。

失敗すればインクの染みによる原稿用紙の大量消費だと罵られ、

日本製紙連合会か環境保護団体に訴えられてしまうかもしれない。

悩んだ末に彼はこう書き始めた。

最初の銃声が空気を震わせさえすれば雪崩のように戦争が始まり、

最初の水滴が地面を濡らしさえすればマシンガンのように雨が降り始める。

最初の銃声、最初の水滴は、小説で言えば最初の一行だ。

ホテルの一室で小説家は狙撃手のように忍耐強く最初の一行を待った。

失敗すればインクの染みによる原稿用紙の大量消費だと罵られ、

日本製紙連合会か環境保護団体に訴えられてしまうかもしれない。

悩んだ末に彼はこう書き始めた。

最初の銃声が空気を震わせさえすれば雪崩のように戦争が始まり、

最初の水滴が地面を濡らしさえすればマシンガンのように雨が降り始める。

最初の銃声、最初の水滴は、小説で言えば最初の一行だ。

ホテルの一室で小説家は狙撃手のように忍耐強く最初の一行を待った。

失敗すればインクの染みによる原稿用紙の大量消費だと罵られ、

日本製紙連合会か環境保護団体に訴えられてしまうかもしれない。

悩んだ末に彼はこう書き始めた。

最初の銃声が空気を震わせさえすれば雪崩のように戦争が始まり、

最初の水滴が地面を濡らしさえすればマシンガンのように雨が降り始める。

最初の銃声、最初の水滴は、小説で言えば最初の一行だ。

ホテルの一室で小説家は狙撃手のように忍耐強く最初の一行を待った。

失敗すればインクの染みによる原稿用紙の大量消費だと罵られ、

日本製紙連合会か環境保護団体に訴えられてしまうかもしれない。

悩んだ末に彼はこう書き始めた。

(以下同文、適当にくり返し終了)

全力で走ってる時ほど、生きてる気がします。

忙しい時ほど、生きてる気がします。

2011/07/21

川の流れのように






















色:泥の色
水:多い
波:逆流
天気:くもり
ひとこと:いつもは右から左に流れてるのに、今日は逆でした。
     こんなことがたまにあるから、隅田川はやめられないんです。

ホッピー問題

ホッピーセットが380円だとすると、

外200円、中180円のパターンの店がほとんどです。

ところが築地駅前の寿楽は、外180円、中200円なんですよ。

原価が高いほう(たぶん)の外よりも、おかわりされる回数の多い中の値段を高くするとは。

なかなか策士だな。

2011/07/20

答えてくれると思うんじゃな

いつから哀しくなくなりますか

双子がいます

ひとりが死にます

哀しいでしょう

三つ子がいます

ひとりが死にます

哀しいでしょう

四つ子、五つ子、六つ子、七つ子

いつから哀しくなくなりますか

質問を変えましょう

いつからか哀しくなることなんてあるのでしょうか



いつから嬉しくなくなりますか

二人をつくりました

嬉しかったでしょう

三人をつくりました

嬉しかったでしょう

四人、五人、六人、七人

いつから嬉しくなくなりますか

質問を変えましょう

いつからか嬉しくなくなることなんてあるのでしょうか



ところでいつからそんなに怒ってますか、かみさま

隅田川通信(スミ通)






















色:泥の色
水:多い
波:それほどでもない。
天気:小雨
ひとこと:「ホークスがペナントレースの台風の目になりそうですね」
      とか言うけど、台風の目って静かなところじゃないのでしょうか?
      
     
      

2011/07/19

国民皆探偵物語

とある王国に心配性な王様がいた。

王様はある男Aの監視を探偵Bに依頼した。

心配性な王様は心配性であるがゆえに探偵Bの監視を探偵Cに依頼した。

もう御分かりのとおりCの監視はDに、Dの監視はEに、Eの監視はFに依頼された。

しかしこの王国にはそんなにたくさん探偵がいるわけではない。

それでも王様はあきらめない。

王族、親衛隊、貴族、学者、農民、牧師などを手当たり次第に探偵として雇い、監視させ、

とうとうその王国に住むすべての人間を探偵として雇いつくしてしまった。

そしてついには最初の男Aをも探偵として雇い、

最後に探偵として雇った人物の監視をさせることにした。

こうしてだれかの監視をしている者はだれかに監視されているという構図が出来上がった。

王様のもとには毎月大量の調査報告書が届いた。

その内容は要約すればほぼ同じであった。「調査対象はある人物の監視をしている。」

みんなだれかの背中を見ていて、みんなだれかに背中を見られていた。

王様は困った。国民皆探偵。それを雇っているのは王様で、王様の財産は尽きかけていた。

そこで王様はひらめいた。私が探偵になろう。私がAの監視をすればいいのだ。

王様は王様をあっさりと辞めてしまった。

そしてすべての探偵に解雇通知を送りつけ、その国で唯一の探偵となった。

後にこの元王様の名前は、探偵シャーロック・ホームズとして世に知れ渡ることになる。

ちなみにホームズを監視するため、だれかに雇われた探偵がワトソン君だ。

探偵を解雇され、職を失った全国民は当たり前のように犯罪発生率を上昇させ、

当たり前のようにたくさんの活躍の場をホームズに与えたんだとさ。

という嘘を来年のエイプリルフールにつこうと思っている。

隅田川





















色:みどり
水:やや多い
波:ゆったりと
天気:小雨
ひとこと:台風が近づいているようだけど、隅田川はいつもとあまり変わりません。
      嵐の前の静けさでしょうか。
      ところで、この「嵐の前の静けさ」という現象がなぜ起こるかご存知ですか?
      気になってネットで調べてみましたが、答えは見つかりませんでした\(-o-)/     

2011/07/15

月の檻

囚人364号は格子付きの小窓から月を眺めながら

「俺はやるべきことをやったんだ。」

と看守に聞こえない程度の声でつぶやいていたが、満月の夜には幾分不安になり

「俺はあんなことやるべきじゃなかったんだ。」

とこれまた看守に聞こえない程度の声でつぶやいていた。



これまで363人の死刑を執行してきた老看守は、喫煙所の薄汚れた窓から月を眺めながら

「俺はあんなことやるべきじゃなかったんだ。」

と部下達に聞こえない程度の声でつぶやいていたが、満月の夜には幾分安心し

「俺はやるべきことをやったんだ。」

とこれまた部下達に聞こえない程度の声でつぶやいていた。



月に囚われたふたりの周期的に揺らぐ心は、決して共振することがなく

硬質で冷淡なコンクリート造りの刑務所にもまた囚われていたため、

その揺らぎが刑務所の敷地外の空気を揺らす可能性は全くと言っていいほどなかった。

だから刑務所の長く高い壁沿いの道を散歩していた野良犬が

身震いをしたのはきっと寒さのせいだろう。



よく晴れた日だった。

多くの死刑がそうであるように、囚人364号のそれも午前中に執り行われた。

老看守は死刑執行室に顔なじみの牧師を招き、しばらくしてから囚人364号を招いた。

囚人364号は抵抗することなく手足を拘束され、布袋を頭からすっぽりと被せられた。

午前中には見慣れぬ暗闇と対峙した囚人364号は、

この闇には月が浮かんでないなと当たり前のことを思ってしまった自分を笑い、

ああ俺はもう二度と月を見ることがないんだなと思った。

それが悲しむべきことであるか、喜ぶべきことであるかはよくわからなかった。



防音性の強化ガラス越しに囚人364号がロープに首を通したことを確認した老看守は、

手をあげて3人の部下に合図を送った。

それを確認した3人の部下は3つのボタンを同時に押し、

囚人364号をあの世へと送った。

そして老看守はいつものように部下達の元へと歩み寄り、

「いいか、俺が、死刑を、執行したんだ。」とひと言だけ声をかけた。



その日の夜、老看守は囚人364号のいなくなった空っぽの牢屋を掃除した。

囚人364号の気配、囚人364号の痕跡、囚人364号の残したもの全てを

丁寧に時間をかけてひとつずつ消していった。

もちろん囚人365号を迎えるためでもあったが、

老看守の心に残る名付けられぬ感情をかき消すためでもあった。

掃除を終えた老看守は、古びた簡易ベットに腰掛け、格子付きの小窓からふと月を眺めた。

くっきりとした満月であった。

しかし喫煙所の薄汚れた窓から眺める満月が与えてくれる安心感を

その満月が与えてくれることはなかった。

その満月は、老看守の脳裏にある言葉を喚起させたが、それを口にすると

今まで積み上げてきたものがあっさりと崩れ落ちてしまいそうだったのでやめておいた。



老看守は月から目を離さずに、ポケットから煙草を取り出し、口にくわえて火をつけた。

部下達はその儀式のような光景を見ていたが、見ないふりをした。

ケムリを吐きながら老看守は「あと1ダースだ。」と自分に言い聞かせるように言った。

あと12日間を黙ってこれまでのように過ごせば、定年を迎え、退職できるのだ。

それでも格子の隙間から射す月の光に照らされていると、

俺が声をあげるべきなんじゃないかと思わずにはいられなかった。

しかしその声をぶつけるべき適切な場所がわからなかったし、

部下達のこれからのことも考えて、その思いを押し殺すことにした。

煙草を吸い終えた老看守は、言葉の代わりにこぼれた涙を部下達に見せぬように、

うつむきながら静かに牢屋を去った。

隅田川カメら





















色:抹茶羊羹のような緑
水:ふつう
波:無
天気:晴れ
ひとこと:踏み切り待ちで電車が自分の目の前を通り過ぎてしまえば、
     自分の中ではもうその電車は過去のものになります。
     でも、実際はもちろん電車はそれで終わりではなく、
     自分の見えないところで目的地に向かって進んで行きます。
     むかしの友だちもおなじです。
     あのころの友達は、自分との接点はもうなくなってしまっているけど、
     今もあのころと同じようにそれぞれの人生を生きています。
     そしてこの隅田川もきっとおなじなのです。
     
     
      
     

2011/07/14

隅田川と生きる





色:黒
水:ふつう
波:無
天気:晴れ
ひとこと:例えばスキーをしているときに、
     「俺、なんで山を降りたり登ったりしてるんだろ」なんて思ったら
     おしまいなわけなんですよ。
     少なくともスキー場にいるあいだはそんなこと考えないほうがいい。
     だから俺たちも、せめて隅田川にいるあいだは、そんな考えはよそうじゃないか。

2011/07/13

左の頬も打たれた場合の話をしようか

「あなたがたも聞いているとおり、『目には目を、歯には歯を』と命じられている。

しかし、わたしたちは言っておく、悪人に手向かってはならない。

だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい。」

とマタイによる福音書5章38-39節には書かれている。

「右の頬を打たれたら、左の頬も差し出せ」とはよく言われていることだ。

ある文章の1節だけ取り出してああだこうだ言うのはいけないことだとは思うが、

今日はこれについて話しておこう。

右の頬を打ったのにもかかわらず左の頬まで差し出されたら、

多くの善良な人はショックで出しかけた手を引っ込めてしまうかもしれない。

でも世の中には差し出された左の頬もなんなく打ってしまう人がいるはずだ。

しかし左の頬を差し出した後のことが38-39節には何も書かれていない。

だからあなたがそのような相手に出会ってしまった場合のために追記しておきたい。

「だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬も向けなさい。(以下追記部分)

左の頬も打たれたら、あなたは正面を向き、相手の目を見なさい。

『もしあなたが3度わたしを打ったなら、わたしは全力であなたを後悔させるでしょう。』

というテレパシーを目で伝えなさい。一生懸命伝えなさい。

それでも相手があなたの鼻っ柱を打ったなら、あなたは開いた手のひらを握り締め

拳をつくりなさい。足を肩幅に開き、右足を40cm後方にずらし、右かかとを浮かせなさい。

半身の体勢をとり、右拳をあごの位置に、左拳は目の高さまで上げ、軽くひじを締めなさい。

あごを引くのを忘れないように。瞬時に構えられるように日ごろから訓練をしておきなさい。

ジムに通うのも良いでしょう。そして蝶のように舞いなさい、蜂のように刺しなさい。

息を吐きながら、あなたの拳を相手に差し出すのです。

左の頬を差し出した先程の素直なあなたのように。遠慮はいりません。

しかし、わたしたちは言っておく。顔はやめなさい、ボディにしておきなさい。」

以上。少々説明っぽくなってしまったが、だいたいこのような感じでどうだろうか。

黙って3度も打たれる人なんて仏様でもない限りいないだろうけれど。

隅田川便り





















色:黒
水:ふつう
波:速い
天気:晴れ
ひとこと:油断していると、このまま流されていってしまう。流されていることも気づかないまま。

2011/07/12

期日

そこはあなたのいる場所ではない。

隅田川日記





















色:茶色
水:やや多い
波:速い
天気:晴れ
ひとこと:俺の定位置を誰かに取られていた。

ありふれた風景

会社帰りに娘を保育園まで迎えに行くのがサトウの日課だった。

国道に面した娘の保育園は駅から自宅までの間にあり、

保育園から自宅まで娘と手をつないで帰るのがサトウの唯一の癒しの時間だった。

18時30分。いつもよりお迎えが少し遅くなってしまった。

保育園前の横断歩道で信号待ちをしていると、門のところで保育士と手をつないで

待ちわびている娘が見えた。

娘のほうもサトウを視界に捉え、パパーと言いながら保育士の手を振り切り、

こちらに向かって走ってくる。

信号がちょうど青に切り替わる。それを確認したサトウが歩きだそうとしたときだった。

神様が指をパチンと鳴らす。

横断歩道の中間に差しかかった娘を黒い影が連れ去った。かのように見えた。

娘へと差し出されたサトウの手は捉えるべき手を捉えられずに空間を漂う。

何が起こったのか、思考が状況に追いついてないサトウの表情は、

笑顔のまま凍りついている。

誰よりも先にその状況を理解した保育士が悲鳴をあげる。

悲鳴に呼び戻されたサトウの思考はようやく状況に追いつく。

娘は、車に轢かれ、30メートル先のガードレールに引っかかっている。

サトウの思考は、まだ言葉と行動に追いついていない。

運転席から若い男性が降りてくる。

喫茶店でウエイターでもしていれば好感のもてそうな男だ。

彼の思考も言葉と行動に追いつかず、その場に立ち尽くしている。

神様がもう一度指をパチンと鳴らす。

助手席からサトウの妻が降りてくる。いつもより化粧が濃い。

妻も彼と同じように停止している。

サトウは妻を見て、娘の方向を見た。

サトウの開いた口からこぼれ落ちた言葉は、「おお、神よ・・・」だった。

その言葉を聞いた神様は満足し、もうその状況に関与することをやめる。

あとのことは知らない。

神様はときどき自分の存在を確かめるため、罪なき人々に関与し、

その力を行使し、災いをもたらす。

たったひと言、自分の名前を呼んでもらうためだけに。

ここにいてはいけない。

今年中にどうにかします。

瞬間

好きな人の好きな曲を好きになるとは限らない。

2011/07/11

隅田川より





















色:チョコレートのような茶色
水:多い
波:やや大きい
天気:晴れ
ひとこと:なんでこんなに茶色くなってんだろ。

2011/07/09

アンドロイドの話をしようか

人の第一印象は3秒で決まるってよく言われていることだけど、

僕はだいたい遅くても2秒ぐらいでその人がアンドロイドかアンドロイドでないか

と言うのを判断できる。自慢するわけじゃないけど、これは訓練によって得られるものではない。

好む好まずに関わらず最初から備わっていて、僕にはそれがわかった。

つまり持って生まれた才能というやつだ。ちなみにこれは携帯電話の話ではない。



アンドロイドは個々差はあれど、独特の雰囲気を身にまとっているし、

独特の性格、独特の体型、独特の顔を持ち、独特の話し方をする。

それらは洗練されたものと言っていいと思う。

矛盾や齟齬やジレンマや無駄や余計と言うものがないし、

それ以上そこにあると邪魔なものは改良に改良を重ね、徹底的に排除されている。

完全完璧完成品なのだ。

アンドロイドが哲学的問題についてあれこれ悩むことはない。必要がないからだ。

例えば、我々はなぜ生きているのか、どこから来て、どこへ向かおうとしているのか

なんて考えることはプログラムされていない。見た目さえ人に近ければそれでいい。

ある特定の目的のためだけに生まれ、生産工場から来て、

目的を果たすと、スクラップ工場へ向かうように出来ているからだ。もちろんリサイクルされる。



アンドロイドと人の見分け方について具体的に書くつもりはない。

なぜならアンドロイドだって、泣いたり、笑ったり、彼女とデートしたり、

充電による食事をしたり、電源オフによる睡眠をとり電気羊の夢を見たりして、

平穏無事に人のふりをして生きているからだ。それを脅かす権利は誰にもない。

実は彼女がアンドロイドだったと知ったところで、何か得することがあるわけじゃないし、

やっぱりちょっと今までと接し方が変わるでしょう。それは僕の望むところではありません。

アンドロイドの方も人の権利を脅かすつもりは今のところないようだし。



ところで読者のみなさん、かく言う僕も、

二十数年の人生の中で限りなくアンドロイドに近い人は幾人か見てきたけれど、

本物のアンドロイドにはまだ会ったことがありません。

アンドロイドではないと判断された人は数多くいますが、

アンドロイドであると判断された人はまだいませんので安心してください。

アンドロイドでないと判断できる才能は存分に発揮されておりますが、

アンドロイドであると判断できる才能は今のところ発揮されてないってことです。

ほんと、才能ってあってないようなものですね。


(余談ですが、僕の好きな哲学者・中島義道氏(よしみっちゃん)は、

「なぜ生きるのか」という問いにこんな感じで答えていたと思います。

「なぜ生きるのか、我々はそれを知るために生きている。」うーむ、さすが哲学者。)

くんもさんもちゃんももういらない。

2011/07/08

午後の隅田川





















色:茶色
水:ふつう
波:ゆらゆら
天気:くもり
ひとこと:研ナオコの娘は似ている。

反時計回り

ある男が首にロープを巻きつけ無表情で空中に静止している

慣性の法則に従うならば、このまま静止し続けるだろう

しかし彼の身体は前後にゆらゆらと揺れ始める

空気との摩擦により磁力でも発生したのだろうか

倒れていた椅子がひとりでに起き上がり彼の足元に移動する

椅子は木製であるのだが

彼はしばらく椅子の上に立ち、首からロープをはずす

椅子から降りた彼は、後ろ歩きでリビングを抜け書斎へ向かう

後ろ歩きが趣味なのかもしれない

リビングでは彼の妻であろう女性と彼の娘であろう子どもが

テーブルを挟んで生産をしている

食事、つまり消費のように見えるが彼女らは朝から生産をしている

彼女らは口にフォークを突っ込み、卵やハムやレタスを次々に口内から取り出す

取り出されたそれらはきれいにお皿に盛られていく

そして口から注がれるミルクが空のコップを満たす

その光景の横を後ろ歩きで通り過ぎる彼に子どもが何かを言う

彼の口元には微笑みが浮かぶ

あるいは頬の筋肉が引きつっただけかもしれない

後ろ歩きのまま書斎に入った彼は、くず入れに向かって手を振る

するとクシャクシャに丸められた紙が彼の手にひきつけられ収まる

糸でも付いているのだろうか

彼はその紙を両手で包む 両手を開くとしわひとつないA4の用紙が現れる

きっとタネも仕掛けもある手品のようなものだろう

彼は顔を歪めながら、それを読む

先ほどの微笑とは違って、彼ははっきりと顔を歪める

この用紙に書かれてある内容が彼にとって喜ばしいものでないことは確かだ

彼はその用紙を三つ折にし封筒にいれ、ペーパナイフでなでて封をする

封をするためのペパーナイフ 不思議な品物だ

封筒を手に彼は後ろ歩きで書斎から出て行く 

そのまま後ろ歩きで玄関に向かい、入り口の自宅郵便ポストにその封筒を入れる

それからしばらく経って、年老いた郵便配達夫がその封筒を回収して去っていく

郵便配達夫もまた後ろ歩きが趣味のようである

味付けだけが得意な女子。

2011/07/07

隅田川日記





















色:黒
水:ふつう
波:ややあり
天気:くもり
ひとこと:まいにち隅田川見せれれてもねえ。。

2011/07/06

隅田川日記





















色:みどり
水:ふつう
波:無
天気:晴れ
ハト:2,3羽
ひとこと:誰もいなくなっても、隅田川はここにある。

2011/07/05

クマの話をしようか

飲み会などでどういう女性が好きか聞かれると、「目元にクマのある人」と答えるようにしている。

そう答えると相手はだいたい困った顔をする。

僕は人を困らせるのが好きではないし、なるべくなら困らせたくはないのだが、

ごく控えめに言っても説明下手なのだ。

嫌いな事なら何とか説明できるかもしれないが、好きな事に関してはうまく言えないことが多い。

だからちょっとここに書いておこうと思う。書いてくれなんて誰にも頼まれてないのだけれど。

さて、質問の答えをもう少し詳しく説明すると、

「元気があって(だがしかし)目元にクマのある人」が好きなのだ。

偉人がよくやるように、少し大胆ではあるが、

まず世の中の女性を「元気のある人」と「元気のない人」に分ける。スパッ。

次にその2つの枠を更に「目元にクマのある人」と「目元にクマのない人」に分ける。スパッ。

すると4つの枠ができる。どれにもあてはまらない人だっているだろうけれど。

①「元気があって目元にクマのある人」

②「元気があって目元にクマのない人」

③「元気がなくて目元にクマのある人」

④「元気がなくて目元にクマのない人」

僕は①の枠に属する女性に惹かれる傾向がある。

②と③は正直というかまあ普通だと思う。④は普段の僕と同じ状態なのであまり惹かれない。

①の人が持つ違和感というか心と身体の矛盾というか

ホントは疲れてるのに元気な素振りを見せて頑張っているような感じに惹かれているのだと思う。

居酒屋でこういう人がいると、じーっと眺めてしまう。

ミドリムシに光を当てると光源に向かって移動するように、僕の視線はそちらに持っていかれる。

そういう性質というか走光性のようなものだ。抗いようがない。

このぐらいでやめておこう。相変わらず説明下手だった。

ここに「ボブである人」「ボブでない人」や「歩くスピードが遅い人」「歩くスピードが速い人」

という要素を加えると細かすぎて自分でもうんざりしてくるし(ちなみに僕はどちらも前者が好きだ)、

これを読んで、人ってそんなに簡単に分類できるものじゃないだろうし、

「元気があって目元にクマがあってボブで歩くスピードが遅い人」だって次の日には

そうでなくなっている可能性が大いにあるではないか。こんな文章は無意味だ。

と呆れた顔をしている(怒っているかもしれない)あなたをぼんやりとではあるが想像できる。

そして僕は人を呆れさせることも好きではないし、なるべくなら呆れさせたくはない。

呆れさせてしまったとしたら、ほんとうにごめんなさい。

ほぼ日刊隅田川





















色:茶色
水:ふつう
波:うねうねと
天気:晴れ
ひとこと:晴れていても、波が大きい日もあるんだよ。

ビールジョッキの向こう

あの人に隅田川よりも気になる人ができてしまったか。

2011/07/02

PLAY YOU

ドキ
ドキドキ
ドキドキドキ

どき
どきどき
どきどきどき

心拍数。

2011/07/01

逃げる妻、追う馬鹿の話の終わり

懐中電灯の細い光を頼りに、僕は洞窟の中を歩いていた。

頼りない光だが、スイッチを切れば身体が闇に溶けてしまいそうだった。

しばらく直進のあと、5つの岐路を右右左右左。

前回と前々回の記憶によるとそのように進めば妻にたどり着けるはずだ。

洞窟、と言うのは何かの暗喩や隠喩ではない。何も示唆していない。

現実の洞窟。暗くて狭くて冷たくて入り組んでいてサービス精神なんてひとかけらもない洞窟。

入り口以外に出口はない蟻の巣のような洞窟。これは直喩だ。

僕は歩きながら、今歩いているこの道が妻の歩いた道であることを望んだ。

僕の足跡が妻の足跡に重なっていることを望んだ。

そして妻の足跡が終わる場所に立ち、妻の背中をそっと抱きしめたいと切に願った。

しかし残念ながら、お望みの結末と言うのはいつも裏切られる。そういうものだ。

妻がいるはずの行き止まり。そこに妻はいなかった。

代わりにテープレコーダーがぽつんと置いてあり、

「PLAY ME」と書かれたポストイットが貼り付けてあった。妻の字だった。

僕は素直に再生ボタンを押した。テープは回転を始め、妻の声が洞窟内に響いた。

「あなたがこれを聞いているころ、私は既に死んでいるでしょう。」

放心。

「と言うのは嘘。あなたがこれを聞いているころ、私は洞窟の入り口に立っています。

あなたが洞窟に入っていく姿もしっかりと見届けました。」

一瞬の安堵の後、混乱。

「私の元彼に地元猟友会に所属している人がいます。

彼にあなたの浮気のことを相談していたのですが、この度正式にあなたを殺すことになりました。」

動揺。

「彼にオオカミを3匹用意してもらいました。あなたの匂いを覚えさせた、7日間餌を与えていない

飢えたオオカミです。彼らを檻から放ちます。その後洞窟の入り口、あなたにとって出口は、

ブルドーザーで破壊し、封鎖します。では、さようなら。地獄では浮気しないことね。

あ、あとこのテープは自動的に消滅するからそのつもりで。」

絶望。

テープレコーダーはボシュッという音と伴に煙をあげた。

それと同時に遠くのほうでガラガラと岩が崩れるような音がした。

僕はじっくりと的確な恐怖を与えられ、丁寧に殺されようとしているらしい。

まるで昔ながらの喫茶店店主が提供するこだわりのコーヒーみたいに。

僕の足は正常な反応を示した。つまりガタガタと震えていたのだ。

オオカミ。オオカミは何かの比喩だろうか。

たとえ何かの比喩であっても、僕に牙を剥く何かであることには間違いない。

どうすればいいのか、どうしなければならないのか、脳は正常な判断力を失っていた。

正常な判断力があり、オオカミへの対抗手段を考えられたとしても、

僕が今用意できる最強最大の凶器は、胸ポケットにあるモンブランの万年筆ぐらいだった。

オオカミに対してはあまりにも無力だ。どうしようもない。

耳を澄ますと、合計12本の足がシタシタと土を巻き上げる音が聞こえるような気がした。

僕が浮気している間に妻は、僕を殺す計画と狂気を静かに育てていたのだ。

それらが今、僕を捕らえようとしている。逃げ場なし。

洞窟の外にいる妻にとって、今の僕は半分死んで、半分生きている状態だ。

哀れなシュレーディンガーの猫のように。

ただ決定的に違うのは、これが思考実験ではないこと、

そして僕は実際に完全なる死を望まれているということだ。

妻の望む結末。それが裏切られる可能性は残念ながら極めて低い。

僕は懐中電灯のスイッチを切り、目を閉じて、身体を闇に溶かすよう努力した。

気配を消すためではない。痛みを少しでも和らげようとしたのだ。

近くで荒い息遣いが聞こえる。獣の匂いもする。そろそろお別れのようだ。

じゃあな、優子、ちえちゃん、and ミッシェル。それから出会えなかったすべての女性たち。

オオカミはもうすぐ僕の背中を見つけるだろう。彼らにとっては僕の背中が、幸福の後ろ姿だ。

最後に愛しい妻へ。

今、うずくまって泣いているのは、僕のほうだ。

そして僕の背中を見つけるのが君じゃないことが何よりも、僕は哀しい。

(完)

川を見ていた。

  



















色:みどり
水:ふつう
波:無
天気:晴れ
ひとこと:フネです。

昨日の隅田川(仮)





















色:みどり
水:ふつう
波:前日より速い
天気:曇り
ひとこと:これは昨日の様子だ。