2011/07/19

国民皆探偵物語

とある王国に心配性な王様がいた。

王様はある男Aの監視を探偵Bに依頼した。

心配性な王様は心配性であるがゆえに探偵Bの監視を探偵Cに依頼した。

もう御分かりのとおりCの監視はDに、Dの監視はEに、Eの監視はFに依頼された。

しかしこの王国にはそんなにたくさん探偵がいるわけではない。

それでも王様はあきらめない。

王族、親衛隊、貴族、学者、農民、牧師などを手当たり次第に探偵として雇い、監視させ、

とうとうその王国に住むすべての人間を探偵として雇いつくしてしまった。

そしてついには最初の男Aをも探偵として雇い、

最後に探偵として雇った人物の監視をさせることにした。

こうしてだれかの監視をしている者はだれかに監視されているという構図が出来上がった。

王様のもとには毎月大量の調査報告書が届いた。

その内容は要約すればほぼ同じであった。「調査対象はある人物の監視をしている。」

みんなだれかの背中を見ていて、みんなだれかに背中を見られていた。

王様は困った。国民皆探偵。それを雇っているのは王様で、王様の財産は尽きかけていた。

そこで王様はひらめいた。私が探偵になろう。私がAの監視をすればいいのだ。

王様は王様をあっさりと辞めてしまった。

そしてすべての探偵に解雇通知を送りつけ、その国で唯一の探偵となった。

後にこの元王様の名前は、探偵シャーロック・ホームズとして世に知れ渡ることになる。

ちなみにホームズを監視するため、だれかに雇われた探偵がワトソン君だ。

探偵を解雇され、職を失った全国民は当たり前のように犯罪発生率を上昇させ、

当たり前のようにたくさんの活躍の場をホームズに与えたんだとさ。

という嘘を来年のエイプリルフールにつこうと思っている。

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